そうしよう

知らない街を容易く気まぐれに歩こう

週末に家で映画を見よう

ゆっくり大切に聞いて、ゆっくり大切に喋って、たまにはほんの少しだけ早く眠ろう

頑張って野菜を食べよう
自分が凡人なことに今日も安心しよう、月並みなこと考えよう、あの人が死んだらそれを口実に 私はきっと仕事を辞めてしまえる とか そういうこと考えよう、考えたって良いってことに、いつだって気が付こう

 

閉じこもりすぎないようにしよう、足を止めすぎないようにしよう、なんか損だって多分良いからきっと足を運ぼう、足を運んだ先で、きっと慣れない人に会って、等身大がどんどん危うくなって苦しくなっても、それでも多分良いから、足を運ぼう、それで良いはずだから、それで良かったはずだから

 

大好きな人のこと、大切だけどすれ違っちゃったかもしれない人のこと、愛おしい人のこと、ずっとずっと考え過ぎよう、何回も同じく考えよう、何回も回り回って同じところに辿り着こう、自分の中でだけではそれが限界だから、大切にする術は多分それしかないから

 

知ってる街も何度だって、容易く気まぐれに歩こう、知ってる街ほど大切に大切に歩こう、全く同じときは多分ないから

孤独の色が最も濃い時間に、全てが無くなった時のこととか考えよう、そうなっても不思議と生きていけるような気がしよう、全然しなくても、そういうことにしておこう

どこまでも真ん中に落ち着こう、ここに居たい、あれを辞めたい、あの森が綺麗、これは嫌だ、これをしたい、あの思い出が恋しい、あの記憶が切ない、あの人が好き

どこまでも真ん中に落ち着こう

真ん中の感情に気が付こう

たとえ何に気が付けなくても、それにだけは必ず気が付こう

正しく気が付こう

 

そうしよう

虫の翳

最近本当に毎日のように夜を走りきっている。明るくなった空を必ず見てから眠っている。夏の夜の虫の声は驚くほど綺麗だなと思う。鳥の声も。ブログ、何か文章を、すごく書きたいんだけど、何を書けばいいのかわからないことが、実はかなり多い。会話じゃないから、全部自分の中から、絞り出さなきゃいけないし。

 

怖いことがたくさんある。嫌な予感がたくさんしている。なんだか、薄気味悪い雰囲気の、ジリジリとした夏。この季節は例年、心理的なバリエーションがとても豊かな気がする。だけど今年は決定的な何かが起こるわけでも無くて、ゆっくりと時間が過ぎていく。今は社会的にも停滞のニュアンスが色濃くて、そこから繋がってくるように私の周りでも、そういう空気感があるんだと思う。怖い。情熱とか、友人とか、人生の時間をたくさん割いてきたものとか、私に対して他の人が抱く気持ちとか、他の人に対して私が抱く気持ちとか、そういうものが自然と、ポロポロと落とされて、徐々に失われていっているような気がする。杞憂だと良いな、と思うけど、なんだかそういう嫌な予感がずーっと、ジリジリと、至近距離で私の横顔を見つめてくるような、そういう怖さが、なんだか今年の夏にはある。あるいはもしかしたら、そんなことは前からずっと行われてきて、今まで、なんなく見逃してきたものに、今更になって目が止まっているだけなのかもしれない。

糸と天使たち

梅雨が明けた。

私の住む建物の工事は終わって、金属の足場はみんな取り払われたみたいだけど、まだ同じマンション群の周りの建物では足場を外している最中で、金属の激突音は鳴り止まない。でも日に日にしっかりとその音は遠ざかって、ここまで届く音はもう心地の良いレベルにまで減衰している。確かに時間は進んでいくと、そう感じる。

 

幸せになりたい気持ちと同時に、ずっとほんのりと不幸でいたいような気持ちもある、と誰かが言っていて、私は結構それがわかるなと思った。彼がどのような意図でそんなことを言ったのかは定かではないけど、仄かな不幸と引き換えに確かに私は、何かを得ているように感じる。それは力かもしれないし、優しさでもあるかもしれない。仄かな不幸、というやつが糸だとして、それが何かの拍子にぷつりと切れた時が、その不幸の終わりだとすれば、その糸が繋がっている先は、感情の城だ。日々様々な形の感情が、表現という形で出、享受という形で入る。しかしこれは謂わば赤子が大味に積み上げた積み木の城みたいなもので、つまりはとてつもなく脆い。複数本ある不幸の糸のすべてが切れて感情の城が決壊したとき、もう表現として外に出てゆける感情は無くなってしまうのかもしれない。糸、とは細く何らかの拍子に簡単に切れてしまいそうなイメージがあって、緊張感や不安みたいなものが糸そのものを常に取り巻いている。仄かな不幸がどこかで途切れてしまうことを、私はどこかで案じている。でもこの糸はおそらく、殆ど、切れることはないくらい、見た目の細さ以上に強固なものであることも、知っている。仄かな不幸のすべてが完全に終わることはきっとなくて、この糸は常に私の感情の城が、絶妙なバランスで成り立つのをこれから先もずっと支え続けるのだろうと思う。

糸の上を天使たちが爪先で渡り歩いている。天使たちの体重で糸はたわんでは張ってを繰り返して、感情の城は呼吸しているかのように揺れ、ざわめくように軋む。天使たちはみんな利き手にハサミを持っていて、このハサミは糸を簡単に切ってしまうのだろうと思う。彼らは暖かい目と緩い頬で微笑んで、無邪気で、どの糸を切ってしまおうか、きっと選んでいる。一本一本、人差し指でなぞってみたり、爪先でたわませてみたりしながら、吟味する。梅雨が明けた。もうハサミは糸を咥えているかもしれない。私にはそれがわからない。それ以上のことはわからない。愛しているな、とてつもなく今は。ずっと愛していたい、お願いします、どうか…

近頃、つぐみが思っていること100個

皆様こんにちは、つぐみです。

ふと、近頃思っていることを沢山挙げたら何か面白いことが言えるんじゃないかと思って、とりあえず100個くらい(キリが良いので)、と決めて、書き出してみました。(40個超えたあたりくらいから早くも何も思い浮かばなくなってきて、絶望しました)

でもなんとか100個書けたので、せっかくなので載せたいと思います。

 

1. 思っていたよりも、自分の誕生日を大切にしている人が多い

 

2. 友人がいなかったら、多分死んでた


3. 実際自分の代わりは腐るほどいるが、別に大体みんなそうなので悲しむことじゃない


4. ローソンに売ってるらしい、フランクフルトに餅をぐるぐる巻いたやつがめちゃくちゃ気になる(ローソンに行く機会が無くまだ買えてない)

 

5. 八王子のラーメン、めっちゃ美味しい

 

6. 長谷川白紙さんの「シー・チェンジ」、本当に良い


7. 外に一歩も出ない生活が2週間を超えると、何かがおかしくなりはじめる


8. 将来は良い感じの公園が近くにあるおうちに住みたい


9. 近くの割と好きなラーメン屋が改装したっぽく、行きたい


10. 社会が怖い(社会が人をおかしくする様を垣間見る機会がなんか最近増えた)


11. 人の思っていることは、本当にわからない


12. お気に入りの小さな喫茶店や、バーというやつを、おれも見つけたい


13.カラオケに行きたい


14. 衝動的にツイッターから絵を全消しすることにメリットは1つも無い


15. 大空スバルさんがゲームをするときすごくメモを取りながらやっているのが愛おしすぎる


16. 早く音楽を出したい


17. 大真面目に主観的にものを作ることがもっとあって良い


18. 秒針の動く音が鳴る時計は捨てた方がいい(うるさいので)


19. 自宅のクソデカ改装工事、流石に長すぎる(そろそろ半年くらい経つ)


20. 5月とか関係なく、別に年中5月病


21. 今の自分の内面や思考は、過去の自分の内面や思考の上位互換というわけでは無いということを、覚えていたい(10代の頃とかの自分のことを安直に侮らない方が良い)


22. 辛いとき、布団をかぶってめっちゃ泣いて、そのまま不貞寝すると、一時的には多少良くなる


23. 国分寺とかに住みたい


24. 一人暮らしがしたすぎる


25. したらしたで、寂しいときがありそう


26. 髪を切りたい


27.絵を描かなくなってから、多少夜に眠りやすくなった気がする


28. 普通にコンソールとかのゲームをしたい


29.電気で動く圧力鍋?みたいなやつ(お米も炊けたりするやつ)、すごすぎる


30. 自分にも人にも、あまり期待しない方が楽かもしれない


31. あまり話したこととかないけどなんか謎にサブ垢とか繋がってる微妙な距離感のツイッターの人とかと、逆に話してみたい


32. 心から作りたいもの、やりたい事に多くの時間を費やすことに対する抵抗は無くて良い


33. 小さい頃に習い事や部活をやっていた経験とかは、知らず知らずのうちに何かと役に立っているのかもしれない


34. 自分が植物とか花とかが結構好きなことに、割と最近気付いた


35. もうちょい飯を、ちゃんと食べた方が良い


36. 共感するものだけが、良いものとは限らない(共感できないけど良い、なんかよくわかんないけど面白い、みたいな尺度を忘れたくないし、忘れて欲しくない)


37. とても頭の良い人でも、死ぬほどどうでも良いことや、めっちゃしょうもないことで喧嘩したりすることが普通にある


38. 子供の頃と比べて、アイスのコーンの部分のことを愛せるようになった


39. ある日、爪切りが途中でめんどくさくなっちゃって片手だけ切って終わらせたせいで、爪の長さが左右でチグハグになったまま、伸びた方から交互に切り続けるハメになってしまったので、爪切りは頑張って両手一気に切った方が良い


40. ルービックキューブを20秒で6面揃えられても、就職はできない


41. 本をたくさん読んできた人は大抵言葉が美しい


42. 自室のコンセントの穴、ずっと2口しかないと思ってた箇所に実は3口あって、最近知って、嬉しかった


43. 周りの人のコメダ珈琲に対する信頼がやたら厚い


44. なんか今年の春やたら長い気がする(だらだらしているからだと思う)


45. 周りのせいにしすぎていたかもしれないことが結構ある


46. 揚げたての天ぷら、バカほど美味い


47. 酒飲んだ次の日、半日は寝てたい


48.  母とか姉、別に普通の人だと思ってたけど、実際は結構変な人っぽいってことに、最近気付いた


49. ちょっと前まで許せなかったこととか譲れなかったことが、なんか今めちゃくちゃ許せたり、普通に譲れたりするのはなに?(良いこととも、言い切れないような気はする)


50. 大空スバルさんの3D、可愛さが規格外


51. スバちょこルーナ3D配信を見ると人は死ぬ


52. 季節による気温の移り変わりについていくのは、1500メートル走でみんなについていくのと同じくらい大変


53. 今までよりも自分で作ったものを愛せるようになってきた気がする


54. 自分で作ったものを愛している人は素敵


55. 阿佐ヶ谷は良い街


56. あんまり執拗に人と自分とを比べなくて良い


57. 複数人で何かを作る経験はした方が良い


58. 就活できる人、ヤバい(凄すぎという意味)


59. お酒に迷ったらとりあえずレモンサワーを選んでおけば大抵の食べ物に合うし飲みやすいので、最近脳死でレモンサワーを選ぶことが多い


60. 缶チューハイのレモンサワーの種類に迷ったら、こだわり酒場のやつのお好きな度数を買っておけばとりあえずOK


61. 音楽流れてると考え事とかできなくなっちゃうタイプだから、逆に常に音楽流しておこうかな、と思ってきた


62. 早朝の森にガットギター弾きに行くとき、ちょっといつもは通らない道を行こうとしたら、家のすぐ下のめっちゃ近くに自販機があることに初めて気付いて、「今日森にガットギター弾きに行こうと思わなかったら、私はいつまでこの自販機の存在に気付けなかったんだろう」って思った、家のすぐ下で水やお茶が買えるのは地味に嬉しいかもしれない


63. サカナクションの新曲「プラトー」、ほんの数回聴き流しただけなのに、サビのメロディを完璧に覚えていて、サカナクションすごすぎだろ、と思った、(普通に俺がすごすぎる可能性もある)


64. 車に道を譲ってもらえることが多いのは、俺が可愛すぎるためです


65. これは身勝手な感情ってわかっているのに、忘れられてゆくことが本当に怖い、怖くなくなりたい


66. たまにほんの一瞬、雷で電気が一瞬消える時みたいに、本当に一瞬だけ、完全に魂が抜けたみたいに無気力になるときがあって、それが死ぬほど怖い


67. 雨があまり好きじゃないけど、窓越しじゃなく、目の前の雨を好きになりたい、出かける時に雨が降っているとして、ここで少し嬉しい気持ちになったりしたい


68. 眠る時の雨音は結構好き


69. 1日の中だけでも、つらい時とつらくない時の差がめちゃくちゃ激しい、ずっと辛いよりはいいのかもしれない


70. 抱き枕的なものはあった方が良い


71. 好きな音楽の作品はCDで持っておき、ふとした時にCDプレイヤーでかけると良い、CDプレイヤーは実家にあったよくわからん古いやつとかでも良い


72. 自室の床が畳であることにメリットは無い(本当にひとつも無い)


73. 客観的な制作を行うときも、確固たる主観は必要なときがある気がする


74. PCキーボードのタイピングは練習しておくと何かと役立つ


75. 自分の過去のブログを読むのは恥ずかしい、ほんとにお前は何を言っているんだ、泥酔してる時に書いたっぽいやつとか、本当に何が書いてあるのかわからない


76. 今年の梅雨こそは雨が少なめだったら良いな、って毎年思っている


77. 人からおすすめされた音楽は1回は真面目に聴いた方が何かと良い、すぐ聴いた方が良い、すぐであればあるほど良い


78. 大学に遊びに行きたい


79. 君島大空さんの「火傷に雨」の音源を初めて聴いた時の感情をずっと完璧に覚えていたいけど、多分無理


80. ラスサビ転調が1番良い曲、結局はスピッツ日なたの窓に憧れて」な気がしてきた、1992年、、、?、、、?、


81. トートバッグはひとつは持っておいた方が良い(遅ばせながら、最近トートバッグを人生初入手し、良いなこれ、、と思っている、、、)


82. 朝まで起きているのあまりにも得意すぎる


83. ニンテンドースイッチ普通に欲しすぎる(私もみんなと楽しくゲームをして遊びたいため、、、)


84. ニンテンドースイッチを買えるだけのお金が突然降ってきても、そのお金でベースを買うと思う(ベースが欲しいので、、、)


85. たまにドラクエをめちゃくちゃやりたくなる時期が来る、今来てる、、


86. ラーメン屋行く時間がある時に限ってラーメンの気分じゃなかったりして、私ってばー!って思う


87. ギターもっと、上手くなりたいなと思うようになった


88. 大西がたまに西田修大に見える瞬間がある

 

89. オールでレコーディングはしない方が良い(狂うので、、)


90. 1日に4リットル水を飲むとお腹がヤバい壊れ方をするのでやめた方が良い(お腹ってここまで痛くなれるんだ、って思った)


91. 良い椅子が欲しい


92. 計画は思い通りには行かないものってこと久しぶりに思い出してる


93. 吉祥寺で食べた貝出汁のラーメン本当にすごく美味しくてしばらく忘れられないと思う


94. 午前中の時間の使い方がガチでわからない(結果寝まくっている)


95. 流す音楽選ぶのめんどくさくなってきてSpotifyの自動再生使ってるけど全然良い


96. マーシャルのアンプ、結局良い


97. 新しい服を買いたい


98. 工事の音の中に母がハンドミキサーでバナナジュース作ってる時の音と全く同じ音入ってる


99. 良い眼鏡をひとつ持っておくとアガる


100. これから先どんどん面白くない人間に、なっていってしまいそうな気がする

 

 

寝る前とかにちょこちょこ書いて、6日くらいかかりました。

いつもツイッターなどではフワフワして主観的でわかりにくいことばかり言っている気がするので、この「近頃、つぐみが思っていること100個」では、わかりにくいことを書かない!具体的なことしか言わない!というルールを自分に課して書きました。(所々怪しいところはあったけど…)

あと、近頃思っていることを100個上げても、別に面白いことは言えないということがわかりました。切ない…みんな的には何か面白いやつとか、興味深いやつとか、あった?(こっそり教えて)

 

みんな、元気?今日も多分、たくさんの苦しいや悲しいで溢れていると予想!!私もだ〜〜、今日はなんだか暑いらしい!これから出かけなきゃいけないのに〜、、暑くならないで欲しいよね、まだ梅雨も、始まってないのに、始まってないよね?始まってたらどうしよう、でも終わってはないよね、梅雨、終わっては流石にないでしょ?(これで終わっていたらいよいよ何も信じられなく…)梅雨のこと全然詳しくないのに梅雨の話なんか出さなきゃ良かった、梅雨のことについて誰か教えてください、できれば夏を遠ざける方法も…

 

それじゃあ、またね

 

つぐみ

じき眠る夕暮れ

2021.2.16

今から書く文章はもしかしたら、多くの人にとって寄り添わない、少し大味で、乱雑な文章になるかもしれない。それは、今私が立っている場所と限りなく重なる位置から見える風景を、より確かな言葉で表現したいために他ならない。今日はなんだか、印象深い日だった。浮ついて、楽しくて、それと少し切なかった。

 


着信音で起床した。携帯を見ると、相手は大西だった。着信に応じつつ時間を確認すると、13時半。よく眠れたような気がする。大西はいつもの調子で「今何してたー?」と聞いてくる。「寝てた〜〜この電話の音で起きた」と返す。「大学の部室とロッカー、片付けに行かない?」

そうだったー大学のロッカー片付けなきゃいけないんだっけ、もう2年くらい開けてない気がする、鍵の番号覚えてないかも、何が入ってるんだ一体、とか思った。

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その1時間後に家を出て、15時くらいに相原に着いた。えらく久しぶりに来た気がした。ていうか実際この駅で降りたの3ヶ月ぶりとかな気がする。いつも通り寂れていて、何もなくて、小さなお店が少しだけあるような町。でも、人がやけに少ないような気がした。前からこんなに少ないんだっけ。大西がこちらに気づくなりイヤホンを外しながら近寄ってきた。私もイヤホンを外した。ファミレスで遅めの昼食の予定だったけど、道の途中で大西が「あ、ここもあるなー」と言って立ち止まった。どうやら新しくできたらしい、私の知らない個人経営っぽい小さなレストランだった。ここにしましょう!と思った。この表に出てるメニュー看板に書いてる牛カレー食べたすぎの気持ちになっていたから…。お店は決まったけど、みやけとヒナタがまだ合流していないので、外で立ち話をして時間を潰していた。私は大学でまたセッションをするだろうと思って、ガットギターを持ってきていた。大西はそれを見るなり、「どこか怒られなさそうな場所で弾こう」などと言い出した。普通少し考えるけど、この静かで寂れた町では賛成だった。きっと彼も、この町じゃないとそんなこと言い出さないだろうな、と思った。

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迷惑にならなそうな場所を探しながら少し歩いた。正直どこも、あまり迷惑にはならなそうだ。どこを歩いても、人が起こす音や気配は私達自身からのものだけで、あとは全部が自然の音だった。この住宅であろう建物や、小さなスナックのような建物などに、本当に人間が入っているのだろうか。大西は私のギターを大事そうに抱えながら、楽しそうに歩いている。結局、駅前の広いスペースの端になった。1番開放的で、1番なんでも許されそうな場所だと思った。大西は本当にギターが好きだ。嬉々と取り出して優しくアルペジオを奏でた。とにかく空が大きかった。全てなんじゃないかと思うくらい、深かった。だから、自分たちまで溶け込めたような気になって、これは空の音だと信じてしまった。

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みやけとヒナタが合流した。大西やみやけやヒナタと会うのは1ヶ月半ぶりくらいで、顔が見られて嬉しかった。みんなあまり変わりない様子だった。さっきのレストランに入った。おしゃれで静かで、暖色の光が心を落ち着かせるような空間。オーナーさんも店の雰囲気と同じように、静かで優しい方で、私たちが入店した時は一人で切り盛りしているようだった。それからいつもみたいに、いつも、というほど会えていなかったけど、世間話とか、音楽の話とか、共通の友人の話とか他愛ない話をしながら昼食を食べていると、しっしーが話題にあがった。しっしーどうしてるだろう、半年くらい会ってないから、しっしーの近況なにも知らないな、と思って聞いていたらどうやら、アーティストとして生きていくことに決めたようだった。創作意欲に溢れ、展示も控えているそうだ。「あのしっしーがねえ…どうしちゃったんだろうね」とみんな口を揃えた。しっしーは卒制でも、造形賞がノミネート止まりで、声をあげて悔しがっていたそうだ。ノミネートされただけでも凄いことだと思っていたから、それで悔しがるなんて、きっと本気だったんだろうな、と思った。その話を聞くと、確かに今までのしっしーとはまるでモチベーションが違う。ただ実際、彼の卒制はとても良かった。みんな、「どうしたんだ」と困惑しながらも、彼のことを気にかけ、応援している気持ちは同じだった。みんなはしっしーのことが相変わらず好きなのだ。私は少し切なかった。しっしーは、今はきっと、半年会っていなくても、限りなく近くにいる存在だ。初めて会ったときから、そういうふうに感じていた。でもなんとなく、これから時間をかけて少しずつ、遠くに行ってしまうような気がする。それはきっと、彼にとって悪いことではないけど、少し切ないことに変わりはなかった。私もどこか、遠くへ行きたいと思った。

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昼食を食べ終えた私達は、大学へ向かった。ガラガラの通学バスの最後尾の席に4人並んで腰掛けた。それすら、なんだかもはや懐かしかった。私達はみんないつも、空いている限り、自然と最後尾の席に座るのだ。

通学バスの車窓から見える風景は、とにかく緑が多い。私たちの大学は山の中にあって、とにかく自然が多いのだ。この地の風景を写真に撮って誰かに「東京の写真だよ」と言って見せても、信じる人はいないだろう。そのレベルだ。ていうか位置的にはもはやほとんど神奈川だ。


大学に着いた。春休み中だしコロナの問題もあるので当たり前だがまるで人がいない。なんなら人間よりも猫の方が多く存在している。今にこの大学は猫に支配されてしまうだろうな、と思った。なんだか人の気配を感じない大学は、まるで時間が止まっているようで、絵の中の世界みたいだと思った。でもそこには確かに気温があって、風があった。ずいぶん日が傾いていた。人がいた頃のこの場所は全部が過去な気がした。きっとそんな訳はないけど、この場所にもう人が戻ることは無い、と言われても、間違えて信じてしまいそうになるくらい、何もかもが静かで、ただ風だけが、芝生の広場を好き勝手走り回っていた。

ここは、学祭でライブをしたり、友達と放課後にバドミントンをしたりした芝生の広場。空が大きくて、落ち着けるベンチもあって、多分この大学にはこの場所が嫌いな人はいない。私もこの場所からよく空を見た。何故か、記憶に出てくるこの場所から見た空は、曇り空ばかりだ。今日は雲ひとつ無い明確な茜色が夕刻を告げていた。ここで空を見るのはこれが最後だったりして、とかあんまり思いたくないけど、ふと、思ってしまった。


私達は絵画棟に入り、部室へ向かった。建物内に入っても、やっぱり人はほとんど見当たらなかった。部室の壁には、私たちが映ったフィルム写真やチェキとか、大西がデカデカと印刷されたライブのポスターとかが所狭しと貼り付けられまくっている。大西が「僕たちがいなくなったら、誰だよこれ、とか言って剥がされちゃうのかな〜」と寂しそうに言う。「そうかもね〜」とみやけが笑う。「いや、きっと剥がされないよ、剥がす労力が無駄だから」と私が言う。ヒナタが「上から貼るっしょ!」と言いながらソファに腰掛けた。私達の会話はいつもこんな調子だ。3年間くらい。腐りそうになるくらい入り浸ったこの部室とも、もうお別れなのか。まだお別れできていなかった気も、随分前にお別れしてしまった気も、どっちの気もして、不思議な気持ちになった。

 

ロッカーを片付けに行った。大西はロッカーから課題で作った足の彫刻とか、絵とか、いろんなものを取り出しながら、「なんか色々、やってたんだな〜」と言った。そうだね、と思った。大西は多分、課題で作ったものとか、あまり捨てられないタイプだ。課題の作品を抱えて「これどうしよ〜」と言っていた。ヒナタとかは普通に捨てられるタイプっぽい感じがする。私も結構捨てちゃう。みやけはそもそもアナログでものを作らない。


その後防音室で適当でささやかなセッションをした。防音室の倉庫から出てきたカホンめっちゃいい音だった。大西がカホンを叩いて私がギター弾いたり、逆に私がカホンを叩いて大西がギターを弾いたりした。みやけはずっとベースを弾いた。ヒナタはiPadでイラストを描いていた。最近ホロライブのファンアートイラストがバズったらしく、ご機嫌だ。そうこうしている間に外はいつのまにか完全に夜だった。ヒナタの「おなかへった〜」が大学を出る合図になった。私も(お腹ヘリウム)と思ったけど、口には出さず、思うだけにしておいた。大西がサカナクションのワンダーランドを口ずさんだ。大西お得意の、ほとんど歌詞を覚えていないフニャフニャワンダーランドだったが、サビの「ワンダーランド」という歌詞の部分はタイトルにもなっている上メロディが耳に残るのもあって全員が歌えるため、その箇所だけみんなで馬鹿デカい声で「ワンダーランド!!!」と歌って、笑った。私達はいつもこんな調子だ。3年間くらい。


大学のバス乗り場までの暗い道を歩いた。さっきも書いたけど、この大学の構内には猫がよくいる。大西やヒナタは猫を見かけると執拗に歩み寄りちょっかいを出しにいくことで有名だ。私はこの4年間の大学生活の中で一体何回、逃げる猫を追いかける彼らの後ろ姿を見たんだろう。

 


私達は来月この大学を卒業する。でも悲しいことに、随分前にもう既に、この大学での日常は失われ、終わってしまっている。各所で静かに眠るように、思い出がたくさんある。その場所の空気を吸うたびに、それらは少しだけ目を覚ます。最近、そういうことが多い気がする。過去があまりにも過去で、遠いから、遠くを見るようにする。そうすると、何かを思い出す。広場から見た曇り空、絵の具まみれの両手、カフェテリアの抹茶タピオカミルクティー、土で汚れたエフェクター、カメラを構えるあの子。そして、私は多分、帰り道で、そんなこととは全然関係のないことばかり考える。思い出とは、それくらいの関係性でいい。あの頃に戻りたいとか、あの頃の日常をまた送りたいとは、全く思わないや。本当に楽しかったけど、きっとそれくらい、今のことに必死なのかもしれない。それが良いことなのか、悪いことなのか、どちらでもないのかは、正直私にはわからないけど。

 

 


ここまで読んでいる人〜!多分いないかもしれないけど、元気ですか?いないかもしれない人にも、私は遠慮なく呼びかけていくよ。元気ですか?などと、月並みな挨拶をしてごめんなさい。私は元気じゃないです。多分。元気かも。わからないや、私が元気がどうかは、今後の動向によります。あと、日によります。まだまだ寒いね。今日も日中は過ごしやすかったけど、夜は超寒くて、泣きそうだったよ。ハイボール飲んでいなかったら、確実に泣いていた。2月くらいって、春が来たら溶けてしまいたい、みたいな気持ちになりませんか?なりまーす。

みんな〜〜〜!!!!!!私はきっと、みんなが思っているよりも、みんなのことが好きだと思います。だから、「つぐみちゃんは私のこと、好きなんよね♪」と思いながら、生きていただきたい。そのようにすると、もしかしたら少し、元気が出るかもしれません、出ないこともあります。そのときはごめんなさい。

この文書いてたら朝になっちゃった。みんなは今から起きるのかな、私と二度寝しちゃおうよ〜〜〜〜〜なーーーーーーーーんて

 

 

ね!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

 

 


それじゃあ、またね。

 


つぐみ

ヘイ、シリ

平山城址公園や長沼や北野は私にとってどんな場所なんだろう。事実としては少年時代、友達とあちこちの方角へ向けて自転車を飛ばしては、ゲームをしたりサッカーをしたり駄菓子屋の店先のベンチであんず飴の袋を咥えたり、ほんのささやかな初恋をしたりした、3つくらいの小さな町の集まり。でもいま電車で通るとそんなことは一つ柵の置かれた向こうにあるような情景で、今柵のこちら側で私がこれらの町に対して覚えた感覚は、きっとまた新しいものだ。ここは、今の気持ちと繋がっているはずのない場所が、無理くり繋がり合おうとしてきているような、不思議な場所。思い出している、というより、ここに置いてきた何かが私を救おうと、私の中に雪崩れ込んできているような、不思議な感情。でもそれらはきっと、果てしなく無力なんだと思う。

 

寒い!夜はどうして日中とは全然違う気持ちになるんだろう。暗くて肌寒いからなのかな。喜んだら良いのか悲しんだら良いのかわからないのにひとつにまとまっていることが、きっとこの世界には私が思っているよりたくさんあるのかもしれない。

寒いなー、寒い、寒くて辛い、つらくて寒い、

身勝手な感情が先行して、どこに吐き出したら良いか、どこに吐き出しても悪い気がするから、これを書いてます。

 

色んな事柄に対して、主に私の内側に関して、どういうふうに思ったらいいのかも、どういうふうに思われたら良いのかも、どういうふうに思われているのかも、全部がわからなくなってフワフワしたまま、怯えたり、やるせなくなったりを繰り返している気がする。怖い。何が怖いんだろう、自分が惨めになるのが怖いのか、嫌われるのが怖いのか、人が傷つくのが怖いのか、自分が傷つくのが怖いのか、多分全部怖いなこれは、全部怖い。最近調子が悪い。調子が悪いのはなんでなんだろう。調子というのはなんか、気持ちとか、心の調子。多分シンプルにお金がないのもある。頑張ってバイトや仕事します。少し絵の仕事も増えたよ(やったー)全然大きなものじゃないけど

 

この先わたし生きていけるのかなー。この先、電車が揺れるのでご注意ください。って言われた今。電車のアナウンスに私の行く末に関して本質を突かれた気になった、多分いや絶対気のせいだ。先のことはずっと不安だけど、きっとこの先もこのまま、浮いたり沈んだりしながらフラフラ生きていくんだろうな、電車というより、海面を漂う、なんだろう、ビニールのゴミみたいな感じで。

 

みんなは最近ど?ハッピーだったことや悲しかったこと、考えさせられたこととか、美味しかったものとか、おもしろかったこととか、そういうことに出会えていますか?出会えていたらとっても嬉しいです。なんの質問なんだこれ。誰が読んでくれているかもわからないのに!わはは!

 

もしここまで読んでくれている人がいるのなら、きっと私はそんなあなたのことが好きだから、だから貴方も、少なくともある程度は、私のことが好き、ってことで大丈夫ですか?大丈夫でーす

 

つぐみ