幻灯

 

曲を出しました。

 

なんだか、かなり大切な曲になりました。もちろん、和声とかリズムとかの観点で、自分たちの思う音楽的な良さを反映できたことも、録音とかエンジニアリングが自分たちの中で高い品質でまとまったことも理由としてある。でもそれだけじゃないんです、大切な理由、すみません、この曲には私の、かなり個人的な想いが秘められています。そのため私にとって一際、大切なものとなっているのです。

 

─────予防線

何を話して、何を話さないか、話すべきか、話さない方が美しいか、「ダサいって思っても、話した方が良いからさ~」自分に言い聞かせるみたいに言った夜、でも、この想いは誰の目にも留まらない場所で秘められることで一層輝くんじゃないか、こういう相反する思想が自分の内側で交錯して、よくはみ出して来ないな、と思う。昔の人はこのような心の機微に「葛藤」と名付けた。なるほど、その名の通り、葛(かずら)や藤(ふじ)のようなツル草の植物が心から飛び出して身体に絡まり、今にも身動きが取れなくなってしまいそうだ。でも良いよ、話すよ、隠し持ってたハサミで自由を手にしました、羽すらも。不自由な気持ち!

───✂︎──

 

f:id:blindtsugu:20230617000511j:image

 

大西がこの曲の1番最初のデモを持ってきたのは確か、去年の12月くらいのことで、その時の音像の状態は今よりももっと、暗めで、冷たくて、少し尖ったような印象のものだった。三宅も俺も、このデモを聴いた時の感触はかなり良くて、次はこれで行こう、とすぐに決まった。大西はこの曲のイメージとして、「抽象的なイメージしか無いけど、湖の底から、外側のぼやけた光を水面を通して見てるみたいな、ちょっと暗くて冷たいんだけど、完全なネガティブってわけではない感じ」というようなことを言っていた。私はそれを足がかりにどういう歌詞を付けるか考え始めた。

三宅が主導となってデモ曲のコード感やグルーヴをいじくり回しているうちに、以前の状態よりも少し、曲に暖かさが出てきた瞬間があった。その頃から、暗さもあるけど本質的には優しい曲なんだ、ということがわかってきて、以前大西が言っていたこの曲に対する印象も踏まえて、私はひとりの友人のことを思い浮かべていた。

 

幻灯の歌詞は明確に、とある友人のことを考えながら書いたものになる。その人は昔、長いこと果てしない孤独の中にいたことがあって、今になってもそういう孤独な部分の障壁みたいなものとか、暗い部分を抱えていたりするような気がする。孤独っていうのはなにも絶対的なものだけじゃなくて、ある側面のみにおける孤独とか、部分的な孤独とか、そういうものは沢山あって、多くの人が少なからず抱えているんだと思う。その人を救いたいとか、連れ出したいとか、そういう大きなことを言いたい訳じゃないけど、ただ私はずっとなんとなく、その人のそういう部分を気にしている。気にしているから、知りたいと思う。知ったつもりになろうとする。限りなく重なる…重なったつもりになる…それが、その人の果てしない孤独に寄り添うために私が選んだ手段で、だから、この曲の主人公はその友人で、歌詞は全て友人の視点で、だけど私の言葉で描いていく。

 

そうしていくうちに、私はときを超えて幽霊になって、あの日の果てしない孤独の中のあなたに取り憑く。あなたの目に映る景色とか、あなたの感情とかを写しとって、私の言葉で表して、きっとどこまでも寄り添うことができる。

そして、孤独の真ん中の暗がりに、未来から来た私の言葉を溶け込ませる。あなたの目に映る景色や感情に、私の感情が介入する。あなたがいつか辿り着く場所にあたたかい光が満ちていること、気付いて…って、気付かれないまま、祈る。

──────

 

タイトルの「幻灯」は、古い映写機「幻灯機」から引用している。これは、静止画の描かれたガラス板に強い光を当てて、レンズを通して幕などに投影するもの。遠く未来の私の祈りが、ひとりきりの部屋の窓辺まで、窓ガラスを通って増幅されるような光とか夢とかと混ざり合いながら、やっと届く、みたいな漠然とした構造を、古い映写機に喩えた。

 

 

未来の私から過去の友人に対する差し金、みたいな、気付かれてないまま届けた手紙みたいな、、声みたいな、、、そういうものを書く意味ってなんなんだろう。私がそういうものを書きたいから書いた、というのはそうなんだけど…じゃあ意味って?って問われると、結構難しいかもしれない。でも私の意思として確かなことはあって、音楽に落とし込んだ言葉もここで書いた言葉もすべて、私とその友人の間だけで終わらせる気は全く無くて、どうにか、何かしらの形で、あの曲を聴いている、この文章を見ている、すべての方々に響いて欲しいというか、誰しもが多かれ少なかれ持っている孤独な側面に塗り込む薬として少しでも作用してくれたら、私の願いは全部叶ったことになるかな、と思います。それを一旦、「意味」とさせてください。

 

f:id:blindtsugu:20230616002101j:image

 


言い切るのが怖い。まだわからない未来のこと、他人の感情のこと、自分の感情のことすらわからないから、言い切るのが怖い。だから人は自分を守るため、誠実さを欠いた逃避行動として、「言い切らない」を実行する!俺も何度このブログで、怯えるまま「言い切らない」を実行しただろう。でも、ぶっちゃけ通常はそれでも良い。優しい人は、優しいことに変わり無いのだ。でも、言い切りたい!言い切るってかっこいい。言い切ることで、誰かが少し前を向けたり、動き出せたりするかもしれないから!

そこで、ずるいことを思いついたものです。過去のあなたになら言い切り放題。わかっていること、知っていること。出会える前から愛はもう存在していること、あの光が君を見せること!いいですか!!?それにね、未来のあなたはとっても素敵なんですよ!!!とか、言ってみる…沢山、言い切ってみる…今だけでも。

 

usurahi - 幻灯

https://linkco.re/SS6ExVX7

 

つづら霊園